陸上競技場

陸上競技場のタータントラックとは?オリンピックや世界陸上の高速トラックとは?

更新日: 著者:RUNNAL編集部

オリンピックや世界陸上を始め陸上競技の中継を見てみると、タータンという言葉を耳にします。陸上競技の経験のある人にとってはお馴染みの言葉ですが、陸上経験の無い人にとってはタータンとは何のことかさっぱり分からないはず。そこで、この記事ではタータン(タータントラック)とはどんなものか紹介させて頂きます。

また、世界大会を始め一流選手が出場する大会でお馴染みの高速トラックについても詳しく紹介しているので、是非参考にしてみてください。

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タータントラックとは

タータントラック

タータントラック(Tartan track)とは、陸上競技場の全天候トラック(オールウェザートラック)のことであり、走路表面の舗装材のことです。

オールウェザートラックは、文字通り全天候に対応するトラックで水捌けが良く、表面が濡れても滑らないため雨の中でも競技を行うことが出来ます。タータントラックは、1967年カナダ開催のパンアメリカン競技大会で初デビューし、1968年のメキシコシティーオリンピックで五輪初導入となりました。以後はタータントラックが世界のスタンダードとなり日本国内の競技場のトラックもタータントラックの採用が増え、現在はほとんどの競技場がタータントラックとなっています。

ちなみにタータントラックは、米国の化学・電気素材メーカーである3M社(当時ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング社)が開発した世界初の全天候舗装材の商標名です。当時は3M社のタータントラックが広く普及しましたが、現在は3M社はタータントラックの販売は行っておらず世界の陸上競技場の多くのトラックは他社製のオールウェザートラックとなっています。そのため、厳密にいうと現在タータントラックはほとんど存在しません。しかし、最初のオールウェザートラックの商標名がタータントラックであり、その名前が広く浸透したことから、現在は全てのオールウェザートラックを総称してタータン或いはタータントラックと呼ぶのが一般的となっています。

 

タータントラックで走りはどう変わる?アンツーカートラック(土トラック)との違い

タータントラックでスタートの準備をする選手

  • 高いパフォーマンスを発揮できる
  • コーナーもスピードを落とすことなく曲がれる
  • 雨の日でもパフォーマンスを損なうことがない
  • 各競技の度に走路をならす必要がない

全天候トラックであるタータントラックが誕生する前は、陸上競技場のトラックはアンツーカートラックでした。アンツーカートラックとは、高温焼成したレンガなどの土を粉砕して作られる赤褐色の土を使用したトラックのことです。簡単に言えば土のトラック。1964年の東京オリンピックのメイン競技場である国立霞ヶ丘陸上競技場のトラックも当時アンツーカートラックでした。

タータントラックは、アンツーカートラックを含む一般的な土のトラックよりも高いパフォーマンスを発揮することが出来ます。トラック自体に弾力性があり、着地時の衝撃を素早く前へと進む推進力へと変えることが出来ます。さらに路面は滑りにくくグリップが良く効くので、走りやすいです。1968年のメキシコシティーオリンピックで初めてタータントラックが採用されて以来、現在に至るまでたくさんの世界記録が誕生しています。

また、アンツーカートラック時代は各競技が終わる度に走路をならす必要があったのですが、タータントラックの場合はその必要がなくなり競技の進行が非常にスムーズになりました。競技者がスパイクを履いて走った後でも地面に凸凹が出来ないので、みんな平等に平坦な走路を走ることが出来ます。

タータントラックを走る時は専用スパイクが必要

タータン用スパイク

タータントラックを走る場合はオールウェザー対応スパイクを履く必要があります。陸上競技用スパイクは、オールウェザー専用スパイク、オールウェザー・アンツーカー兼用スパイク、アンツーカー専用スパイクがありますが、タータントラックで使用出来るのはオールウェザー専用スパイクかオールウェザー・アンツーカー兼用スパイク。

オリンピックや世界陸上を始めトップ選手が出場する大会はもちろん、中学生や高校生の大会が開催される大会も基本的に公式戦も記録会も全天候トラック(オールウェザートラック)です。そのため、中学校や高校で陸上部に入るならオールウェザー対応のスパイクを用意する必要があります。

タータントラックは大きく2種類

ウレタン製

ウレタン製タータン

タータントラックは大きく2種類。一つは、ウレタン製オールウェザートラック。ウレタン製は、反発力があり記録を狙いやすい一方で衝撃吸収性も備えているため競技者の脚への負担を軽減することが出来ます。また、排水性に優れ雨の日でも滑りにくい。どんな気候や天候でも舗装が安定しているので、耐久性に優れています。日本国内の陸上競技場のトラックはほとんどがこのウレタン製タータンです。

合成ゴム製

ウレタン製タータン

もう一つは合成ゴム製オールウェザートラック。ウレタン製タータンは、競技場で液体を流し込み作り上げるのに対し、合成ゴム製は工場で作り上げたシートを競技場に敷いていくタイプのもの。ウレタン製に比べて施工方法が簡単です。また、ウレタン製に比べるとより高いグリップ性を発揮し、強い反発力も備えています。そのため、スピードを出しやすく、1999年以降のオリンピックでは合成ゴム製タータンが採用されています。

オリンピックや世界陸上で定番となっている「高速トラック(高速タータン)」

高速トラックを走る陸上選手

近年のオリンピックや世界陸上ではメイン会場となる陸上競技場のトラックに高速トラックが採用されることが多いです。高速トラックとは、通常のトラックに比べて弾力性や反発性、グリップ性に優れていて、好記録を出しやすいトラックのことです。高速トラックは通常のトラックに比べると、身体への負担は大きいため一般的な競技場で採用されることはほとんどありませんが、世界中のトップ選手が凌ぎを削る世界大会では高速トラックが使われることが多くなっています。

2020年東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場にも、その高速トラックが採用されました。1992年バルセロナオリンピック以降、陸上競技場のトラックのサプライヤーを務めているイタリアのモンド社の「MondotrackWS」という高速トラックを採用。この舗装材は、2012年ロンドンと2016年リオデジャネイロで採用された高速トラックの進化版で、2020年東京オリンピックではさらなる好記録が期待されます。

国内にある代表的な高速トラックの陸上競技場

長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)

日本国内にも高速トラックを採用している陸上競技場があります。その代表例が、大阪府大阪市にある「長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)」です。長居陸上競技場では、国内の奥アンツーカ社の「トップエースCL」という全天候舗装材を採用しています。トップエースCLは、弾力性に優れているため記録を狙いやすいのが特徴。2007年開催の世界陸上競技選手権大会大阪大会へ向けて導入され、現在に至るまでたくさんの好記録が同競技場で誕生しています。

広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)

広島広域公園陸上競技場

出典:ひろたび

広島県広島市にある広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)も記録を狙いやすい高速トラック採用の競技場として有名。エディオンスタジアム広島(愛称:広島ビッグアーチ)では毎年織田幹雄記念陸上競技大会(通称:織田記念)が開催されています。国内の有力選手が多数参加する大会で、日本グランプリシリーズの一つとしても数えられる大会です。この競技場では、長谷川体育施設社のウレタン製全天候舗装材「レヂンエース」が採用されています。

鳥取県立布施総合運動公園陸上競技場(コカ・コーラ ボトラーズジャパンスポーツパーク陸上競技場)

鳥取県立布勢総合運動公園陸上競技場

鳥取県鳥取市にある鳥取県立布施総合運動公園陸上競技場(コカ・コーラ ボトラーズジャパンスポーツパーク陸上競技場)は、オリンピックや世界陸上でお馴染みの合成ゴム製全天候舗装材を採用している陸上競技場です。高速トラックでお馴染みの世界的メーカーであるイタリアのモンド社製のスーパーXを採用しています。スーパーXは1992年バルセロナから2012年ロンドンまで採用されたタータン。毎年同競技場で開催される布施スプリントでは好記録が狙えるということで多くの一流スプリンターが集結します。

近年増えつつあるブルートラックの効果

青いトラック

陸上競技場のトラックの色はほとんどがレンガ色(赤褐色)です。これはアンツーカートラック時代の名残りですが、近年は青い色のブール―トラックが増えつつあります。オリンピックでは2016年リオデジャネイロオリンピックの陸上競技場のトラックがブルーランニングトラックを採用したことで大きな注目を集めました。国内競技場のほとんどはレンガ色ですが、少しずつブルートラックも増えています。

青いトラックは、競技者の集中力を高める効果があると言われています。興奮を抑えリラックスし、競技に集中出来るため、競技者のパフォーマンス向上に青いトラックが効果を発揮すると近年注目を集めるようになっています。もちろん、その一方で青いトラックはあまり馴染みが無いために逆に集中力低下を招きパフォーマンスに悪い影響を与えるといった声もあります。しかし、慣れてしまえば青色の方がスポーツパフォーマンスに良い影響を与えるのは間違いないので、今後はブルートラックが主流となっていく可能性は高いです。

オリンピックや世界陸上でトラックに注目してみよう!

短距離選手

陸上競技場のトラック表面の舗装材であるタータンは、競技者の好記録達成を支える重要なものです。同じタータンとは言っても各競技場で採用している舗装材に違いがあります。それぞれの舗装材にそれぞれの特徴があり、競技者によって合う合わないの相性もあるために、どの舗装材が一番好記録が出やすいかは一概に決めることは出来ません。それでも、一般的に高速トラックと言われる舗装材と採用している競技場では今までにたくさんの好記録が誕生しています。陸上競技の中継で「この競技場は高速トラックを採用しています」と聞いたら、是非世界記録や日本記録といった好記録を期待してみましょう。

    RUNNAL編集部

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