楽に走れるようになるためには、呼吸法を見直してみることが大切。ランニング中の呼吸が苦しい場合は、浅い呼吸になっていたり、酸素と二酸化炭素の換気が効率よく行えていなかったりするのが原因かもしれません。日々のマラソンの練習でも、呼吸法を改善することで、より良い走りが出来るようになることがあります。
この記事では、ランニング時の効果的な呼吸方法について紹介しています。よく話題に上がる「鼻呼吸」か「口呼吸」かという議論についても、しっかりと紹介しているので、是非参考にしてみてください。
目次
ランニングをする時、呼吸は凄く大事
ランニングをする時、呼吸法は凄く大事です。呼吸とは、体内へ酸素を取り入れ、体内の二酸化炭素を外へ排出すること。私たちは生きて行く上で普段の生活の中でも当然のように呼吸を行っていますが、運動時になると呼吸は活発となります。それは、運動をすると筋肉にたくさんのエネルギーが必要となり、体内の糖質や脂肪をエネルギーへと変えるために、たくさんの酸素が必要となるからです。信号が変わる前に小走りをしたり、駅の階段を上ったりすると息が上がるってしまうのも、体が通常時に比べてたくさんの酸素を必要としているためです。
ランニングにおいて、より楽により長く走れるようになるためには、効率的に酸素を体内へ取り込みつつ、素早く二酸化炭素を外へと排出する呼吸法が必要になってきます。呼吸の仕方が悪いと、体内の酸素と二酸化炭素の換気が悪くなり、思うように長くはしなかったり、すぐに疲れてしまったりします。ちょっとでも長距離を楽に走ろうと思ったら、正しい呼吸を身に着けることが凄く大事なのです。
ランニング時に効果的な呼吸法①「鼻呼吸vs口呼吸」
ランニングをする時の呼吸法で一番悩むのが、「鼻呼吸」か「口呼吸」かという問題。一般的には、鼻呼吸を勧められることが多いです。鼻呼吸は口呼吸に比べて健康面でメリットが多いので、歯医者さんや耳鼻咽頭科の先生たちが強く勧めるのが鼻呼吸。ランナー向けの雑誌や情報サイトでも鼻呼吸が勧められることが多いですが、実はランナーに鼻呼吸は間違い。ランナーの場合はより酸素を体内へと取り込める口呼吸が正解です。
日常生活→「鼻呼吸」が正解!
多くの医師やスポーツインストラクターが強く勧める呼吸法が、「鼻呼吸」。鼻呼吸は、空気を吸い込む段階で鼻腔内の鼻毛がフィルターの役割を果たし、空気中のほこりや花粉、細菌、ウイルスといった有害なものが体内へと侵入するのを防ぐことが出来ます。さらに冬の乾燥した冷たい空気が直接のどに届くのを防ぎ、空気を一旦温めて水分を含ませた状態にすることが出来るので、口呼吸特有ののどの痛みやのどの腫れといった疾患が起こるのを予防することが出来ます。健康面で考えると、鼻呼吸は口呼吸より圧倒的に有利です。
そのため、日常生活における呼吸法は、口呼吸ではなく鼻呼吸がオススメ。日頃から喉を痛めやすい、虫歯になりやすい、口臭が気になるといった人は、口呼吸がその原因になっている可能性もあるので、普段の呼吸は鼻で吸って鼻で吐くということを意識してみましょう。
ランニング・マラソン→「口呼吸」が正解!
日常生活なら鼻呼吸がオススメ。そのつながりで、ランナーにも呼吸法として鼻呼吸が勧められることが多いですが、それは間違い。ランニング・マラソンをするなら、走る時は断然口呼吸が有利です。もちろん、健康のことを考えると、鼻呼吸の方が良いことは間違いありません。しかし、一度の呼吸で体内で送り込める酸素の量が少なくなってしまいます。普段歩いたり、仕事をしたり、家事をしたりといった行動では鼻呼吸で十分でも、ランニングをするには鼻呼吸では不十分です。鼻腔は口腔より物理的に狭いので、一度に吸い込める空気の量は少なくなります。
実際、2017年の研究「無酸素運動における口呼吸と鼻呼吸に関する研究」では、口呼吸の方が鼻呼吸よりも効率的に体内へ酸素を取り込める可能性が高いことが示唆されています。ランニング中は筋肉で大量の酸素が必要です。筋肉を動かすエネルギーを作るためには酸素が必要で、酸素不足になると息が上がったり、筋肉が思うように動かなくなってしまいます。そのため、ランニングパフォーマンスという点を重視するなら、よりたくさんの酸素を吸い込める口呼吸がオススメ。
ランニング時に効果的な呼吸法②「胸式呼吸vs複式呼吸」
呼吸の仕方は「鼻呼吸か口呼吸か」という問題だけではなく、「胸式呼吸か腹式呼吸か」という問題もあります。胸式呼吸とは浅い呼吸と言われるもので、首や肩を使った呼吸法。肋骨が横に広がることで肺に空気が入る仕組みです。一方の腹式呼吸は深い呼吸と言われるもので、お腹を使った呼吸法。肺の下にある横隔膜が下に下がることで肺の中にたくさん空気が入る仕組みです。
たくさん息が吸える「腹式呼吸」が正解!
普段の日常生活はもちろんのこと、ランニングをする場合も「腹式呼吸」を意識しましょう。複式呼吸は、一度の呼吸で肺にたくさん酸素を取り込める呼吸方法です。ランナーの場合、いかにたくさんの酸素を取り込めるかが重要。酸素をたくさん体内へ取り込み、その酸素を効率よく体の隅々まで運ぶことで、エネルギーがたくさん作られ、速いペースで長く走れるようになります。また、腹式呼吸は体の緊張を程よく解すことが出来るので、リラックスしながら走るためにも重要です。
腹式呼吸を身に付けよう
普段から浅い呼吸の胸式呼吸になっている人は、腹式呼吸のトレーニングをして、無意識に腹式呼吸が出来るようにしておきましょう。特に女性や猫背の人は胸式呼吸の人が多いので要注意です。
腹式呼吸を身に着けるためのトレーニングはとても簡単です。まずは仰向けに寝て、お腹の上に本を置きます。その本を押し上げるように息を吸い、本を押し下げるように息を吐きます。これを繰り返すことで、腹式呼吸を身に着けることが出来ます。
ランニングに効果的な呼吸法③「呼吸のリズム」
ランニング時の呼吸のリズムも大切です。呼吸のリズムが悪いと、走りのリズムも悪くなります。呼吸のリズムは走りのピッチと同調することで良い効果が得られるので、走りのピッチと呼吸のリズムが同調するように心がけましょう。走りのピッチに呼吸のリズムを合わせるというのは、片足を前に出すタイミングで息を吸い(または息を吐く)、もう片方を前に出すタイミングで息を吸う(または息を吐く)ということです。
ランニング時の基本は「2回吸って2回吐く4拍子呼吸」
ランニング時の基本は、4拍子呼吸。2回吸って2回吐くというリズムが定番です。「スース―ハーハー」を1呼吸ととらえ、「左足→右足→左足→右足」の4歩で1呼吸するというものです。ランニング中のピッチは毎分180歩ぐらいなので、1分間あたり45回呼吸することになります。一般的なランニングのペースであればこの呼吸リズムが一番合いやすいので、まずはこの4拍子呼吸に取り組んでみるのがオススメ。
スローペースなら「6拍子呼吸」、ハイペースなら「3拍子呼吸」
走る時の最適な呼吸のリズムは走るペースによって変わります。ゆったりのペースだと4拍子呼吸は合わないので、「スース―ス―ハーハーハー」という6拍子呼吸。逆に速いペースだと「スースーハー」あるいは「スーハーハー」という3拍子呼吸が合いやすいです。もちろん、これらのリズムに合わせることなく、自分の走りに合ったリズムを自分自身で見つけていくことも大切です。
マラソン大会本番では呼吸法は気にしないのが一番
ハーフマラソンやフルマラソンなどマラソン大会で良い結果を出すためには、呼吸法はどうするべきか。その答えは、マラソン大会では呼吸の仕方は一切気にせず、体に任せること。呼吸法を意識するのは練習の時のみで、レースでは呼吸法は意識しないのが一番。大会で呼吸を意識しながら走ると、多くの場合は良い結果にはつながらないでしょう。良いタイムを出したいなら、本番は呼吸は一切気にせず、走ることだけに全神経を集中させることが大切です。集中して走っていれば、体が自然に一番ベストな呼吸をしてくれるはずです。
ランニング時に呼吸が苦しいというランナーは、今一度呼吸を見直してみよう
ランニング中に呼吸が苦しくなる、すぐに疲れてしまうというランナーの場合は、呼吸の仕方が良くないのかもしれません。そのため、「鼻呼吸か口呼吸か」「胸式呼吸か腹式呼吸か」「呼吸のリズム」の3点について見直してみましょう。
また、走り始めたばかりで呼吸が苦しいという初心者ランナーは、体力不足による心肺機能が低いことが呼吸の苦しさの原因です。その場合はいくら呼吸法を変えてみても楽になることはありません。定期的にランニングを続けて心肺機能を高めていくのが唯一の解決策です。走ることに慣れて心肺機能が高まれば、いままでよりも走るのが楽になり、呼吸も乱れなくなっていきます。