陸上短距離走が速くなるためには、毎日の練習方法が重要です。短距離走には、スタートダッシュ区間とトップスピード区間、スピード維持区間の3つの区間があり、それぞれの区間を強化するためのトレーニングをバランスよく実践することで、短距離走におけるタイムをグッと縮めることが出来ます。今回の記事では、陸上短距離種目(100m・200m・400m)を専門にする中学生や高校生向けに、走力を高めるおすすめの練習メニューを紹介しています。SD(スタートダッシュ)やテンポ走、マーク走など様々なトレーニングメニューを紹介しています。もっと短距離が速くなりたい、タイムを縮めたいという人は是非参考にしてみてください。合宿や自主練の練習メニューを何にしようか迷っている人も必見です。
陸上短距離種目のタイムを縮めるための3つの強化ポイント

短距離走(100m・200m・400m)のタイムを上げるためには、「スタートダッシュ」「トップスピード」「スピード持久力」の3つを強化する必要があります。日々の練習では、この三つを鍛えることを意識して練習に取り組むことで、試合での自己ベスト更新が近づいてきます。
①スタートダッシュ強化
短距離走ではスタートダッシュを強化することが大切です。特に100mではスタートダッシュに出遅れると、大きくタイムを落としてしまうので、スタートを速くすることは欠かせない。陸上競技を始めたばかりの人は、スターティングブロックを使ったクラウチングスタートに慣れてなくてスタートが遅いという人が多いですが、しっかりと練習でスタブロを使ったスタートに慣れることが大切です。
また、スタートダッシュではピストルの音に素早く反応するだけではなく、地面を力強く押して加速することも重要。スタート直後の数歩で上手くスピードに乗れないという人は、スタート姿勢や最初の一歩の出し方も意識してみましょう。
②トップスピード強化
短距離走のタイムを縮める上で一番重要となるのがトップスピードの強化です。100mではスタートから40~70mあたりでトップスピードを迎える選手が多いですが、走力や加速の仕方によって個人差があります。200mでもトップスピードに達する位置は選手によって異なり、コーナーから直線にかけて高いスピードを発揮することが重要となります。このトップスピードが速ければ速いほど、全体のタイムを縮める上で有利になるため、良いタイムを出すためには欠かせない能力です。
③スピード持久力強化
短距離走の後半は、いかに速いスピードを維持出来るかが大切です。特に200mや400mでは、スピードを保つ能力が低いと後半で失速してしまい良いタイムを出せません。「後半に伸びる」走り方が出来るように、基礎的な体力とともにスピードを維持する能力も鍛えておきたいところです。
ただし、100mと400mでは必要なスピード持久力が異なります。100mではトップスピードに達した後の速度低下を小さくすることが重要ですが、400mでは長い距離を高いスピードで走り続ける能力が特に重要となります。
陸上短距離走におすすめの練習メニュー10選
①SD(スタートダッシュ)

- 30m×3~5本
- 60m×3~5本
短距離走の一番定番となる練習が「SD(スタートダッシュ)」です。スタートダッシュは、試合同様にスターティングブロック(スタブロ)を使って、ピストルの合図とともにスタートを切り、30~60mの短い距離を走る練習です。この練習の目的は、「スタブロに慣れる」「音への素早い反応を養う」「加速力を身に着ける」といったところ。
30mの短いSDは、特に短距離走の加速力を鍛えるのに効果的です。短距離走は、大きく「スタート→加速→トップスピード→スピード維持」の4つの局面に分けられますが、30mSDはスタート直後の加速力の強化に効果的。さらに距離を伸ばした60mSDは、トップスピードに近づくまでの加速力を鍛えるのに効果的です。日々の練習では、30mSDと60mSDと違った距離に取り組むことで、スタートからトップスピードに乗るまでの短距離走の前半部分の速さを向上させることが出来ます。
スタートダッシュの練習に取り組む際は、しっかりと前傾姿勢を作ってスタートを切ることが大切です。スタートからすぐに上体が起きてしまうと、上手くスピードに乗ることが出来ません。イメージとしては、地面を後方へ力強く押しながら前へと進んでいくイメージです。ただし、無理に低い姿勢を維持するのではなく、加速に合わせて自然に上体を起こしていきましょう。
また、SDは1本1本の質が重要となるため、30mなら2~3分程度、60mなら3~5分程度を目安に休憩を取り、十分に回復してから次の1本に取り組むのがオススメです。
②加速走

- (20m+30m)×3本
- (20~30m+50m)×3本
- (20~30m+80m)×3本
短距離走で良いタイムを出せるかどうかを決定づけるのが、スタートから加速して到達する「トップスピード(最大速度)」。このトップスピードを鍛える定番の練習が「加速走」です。加速走は20~30mほどの助走を設けて30~80mの距離を速いスピードで走る練習です。いきなり50mを全力で走るよりも、助走区間を設けた方が、より速いスピードを出しやすいので、加速走はスピードの最大出力を高めるのに効果的です。
100m走では100mより短い距離を走ることで、トップスピードを鍛えることが出来るので、速いスピードで走る距離は30mや50mといった距離がおすすめ。200mや400mの選手も、トップスピードを鍛える目的なら短い距離で取り組むのが効果的です。
また、80mや100mと距離を長くした場合は、トップスピードを維持する能力を鍛える練習としても活用出来ます。後半に弱いというスプリンターは、距離長めの加速走に取り組んでみるのも良いでしょう。ただし、距離が長くなるほど疲労も大きくなるため、1本1本の間は十分に休憩を取り、スピードが大きく落ちないようにすることが大切です。
③テンポ走

- 100m×3本
- 150m×3本
- 200m×3本
短距離走の走る動き作りとして、効果的なのが「テンポ走」。テンポ走は、100~200mの距離を全力ではなく、余裕を持ったスピードで走る練習です。一般的には最大速度の60~75%程度で走る低強度のテンポ走もあれば、80~90%程度の速いペースで走るテンポ走もあり、練習目的によって強度が異なります。
短距離走を速く走る脚力を鍛えるだけではなく、短距離走を速く走るためのフォームをチェックするための練習としても効果的。スプリントドリルなどで身に着けた動きを、実際に走る中で再度確認するという位置づけの練習です。中学校や高校で初めて陸上競技に取り組む人は、このテンポ走で、しっかりとフォームを固めていきましょう。また、中級者・上級者の人も日々テンポ走でフォームを修正したり、再確認したりすることは非常に大切。
特にフォームの確認を目的とする場合は、無理にスピードを上げず、リラックスした状態で走るのがオススメです。
④スレッド走

- 20~30m×3本
- 50m×3本
- 80m×3本
タイヤを引いたり、そのほかの重りを引いたりしながら走る練習をスレッド走(牽引走)と言います。また、パラシュートを引っ張りながら走るトレーニングも、抵抗をかけて走る練習の一つです。スレッド走は、短距離走の爆発的なスタート時の加速力を強化する効果があります。
距離が短め(20~30m)のスレッド走はスタート時のダッシュ力、距離が長め(50m~80m)のスレッド走は加速力やスピードを維持する能力を鍛えるのに効果的。基本的には、30m前後の距離で取り組み、スタートダッシュ力を鍛える目的で取り組むのがおすすめです。
ただし、スレッド走は重りが重すぎると走るフォームが崩れてしまうことがあります。特に陸上初心者の場合は軽い負荷から始め、普段のダッシュに近いフォームで走れるようにしましょう。また、スレッド走は主に加速力を鍛える練習なので、トップスピードを鍛えたい場合は加速走などと組み合わせるのがオススメです。
⑤坂ダッシュ

- 30m×3本
- 50m×3本
- 80m×3本
短距離走の加速局面を鍛えるのに効果的な練習が、「坂ダッシュ」です。坂道を駆けのぼることによって、股関節やお尻の筋肉(大殿筋)、もも裏の筋肉(ハムストリング)を効果的に鍛えることが出来ます。これらの筋肉は、スタートからトップスピードに乗るまでの加速区間で爆発的な加速力を生み出すのに欠かせない筋肉。傾斜のある坂道で走ることで、体の後ろ側の筋肉を効果的に鍛え、素早く初速を得られる体を作ることが出来ます。
また、坂ダッシュは体力を向上させる目的もあります。特に冬季練習では坂ダッシュをすることが多くなります。坂ダッシュをして体力を養うことで、これからタイムを向上させるための厳しい練習にも耐える強い体を作っていくことが出来るのです。
ただし、坂道の傾斜が急すぎると普段の走り方とは大きく異なる動きになってしまうため、緩やかな坂道を選ぶのがオススメです。また、まだまだ陸上部に入りたてで体力がないという短距離走の選手は、最初は本数を少なく設定し、徐々に増やしていくと良いでしょう。
⑥マーク走

短距離走を速く走るためには、足の回転数であるピッチを上げることが大切。そのピッチの向上に効果的な練習が「マーク走(スティック走)」です。マーク走(スティック走)は、マーカーコーンやスティックを足を着く場所に目印として置きます。普段のストライドよりも少し狭めの間隔に目印を置いて走ることで、素早く脚を回転させる感覚を身に着け、ピッチを引き上げることが出来ます。また、逆にストライドを伸ばしたいという場合は、普段のストライドよりも広めの間隔に目印を置いて走ることで、ストライドを伸ばす感覚を身に着けることが出来ます。
ただし、短距離走のスピードはピッチとストライドの両方によって決まるため、どちらか一方だけを意識すれば良いというわけではありません。特にマーカーの間隔を広くしすぎると、無理に足を前へ伸ばして着地する走り方になってしまうことがあります。自分の身長や走力に合った間隔を設定し、自然なフォームで走ることを意識しましょう。
⑦ウェーブ走

- 150m(50m加速→50mリラックス→50m加速)
- 300m(100m加速→50mリラックス→150m加速)
- 400m(100m加速→50mリラックス→250m加速)
後半でも伸びる力強い走りを鍛えるには、「ウェーブ走」が効果的。ウェーブ走とは、ペースを上げ下げする練習で、1本の中で加速して走る区間とリラックスして走る区間を繰り返す練習です。この練習に取り組むことで、200mや400mで後半に失速してしまうのを防ぎ、後半でも「粘れる」「伸びる」走りが出来るようになります。もちろん、100mでも同じように後半のスピードを維持する能力を鍛えることになります。
150mウェーブ走に取り組む場合は、最初の50mは加速し、次の50mはリラックスして走ります。そして最後の50mのところでギアを入れ替えて再び加速します。また、300mなら「100m加速→50mリラックス→150m加速」、400mなら「100m加速→50mリラックス→250m加速」といった形で取り組んでみましょう。
ただし、リラックス区間は急激にスピードを落とすのではなく、力みを抜きながら走ることが大切です。また、300mや400mのウェーブ走は負荷が高くなるため、主に200m・400mの選手向けの練習となります。100mの選手なら150m程度の短い距離で取り組むのがオススメです。
⑧セット走

- 150m+50m+50m
- 300m+200m+100m
短距離走のスピード維持力、トップスピード、加速力とバランス良く鍛えられる練習が「セット走」です。セット走は距離の違うダッシュを休憩を挟みながら繰り返す練習です。100m、200mの短短パートの選手は「150m→50m→50m」という設定、400mの短長パートの選手は「300m→200m→100m」という設定がおすすめ。後半へと走る距離を短くすることで、疲労がある状態でも速いペースで走れる力を鍛えることが出来ます。また、体力を強化するという意味合いもあるので、鍛錬期の練習としておすすめです。
ただし、特に「300m+200m+100m」は負荷が高い練習です。100mウォーク程度の短い休憩でつなぐ場合は、1本1本を全力で走るのではなく、設定タイムを決めて取り組むことが大切です。反対に、1本1本を速いスピードで走りたい場合は、休憩を長めに取るなどして調整しましょう。
⑨オーバースピードトレーニング

オーバースピードトレーニングは、トップスピードの向上を目的とする練習の一つ。オーバースピードトレーニングとは、専用器具を使って引っ張ってもらったり、緩やかな下り坂を利用したりすることで、普段の全力疾走よりも速いスピードを体感するという練習です。普段より速い脚の動きを経験することで、神経系への刺激やスプリント動作の改善が期待出来ます。
ただし、オーバースピードトレーニングは、必ずトップスピードが向上するというわけではありません。また、強く引っ張りすぎたり、急な下り坂を全力で走ったりすると、フォームが崩れたり、ハムストリングなどを痛めたりする危険があります。
オーバースピードトレーニングは専用の器具が必要だったり、指導者によるサポートが必要だったりと、一人では中々取り組めない練習です。そのため、特に中学生や陸上初心者の場合は無理に実施する必要はありません。まずはSDや加速走など、通常のスプリント練習でトップスピードを高めることを優先しましょう。
⑩インターバル走

- 100m×5本
- 150m×4本
- 200m×3本
スピード維持力を鍛えるのに効果的な練習が「インターバル走」です。速いスピードで走る疾走とゆっくりと走る緩走を繰り返す練習で、400m走のスピード持久力や高強度の運動を繰り返す能力を鍛えるトレーニングとして定番。また、100mや200mの選手も体力強化として、練習時期や目的に応じてインターバル走に取り組むと良いです。
インターバル走は基本的に1本1本は8~9割ほどの力で走り、1本1本の間は100mジョグやウォークでつなぐことが多いです。ただし、走る距離やペースによって負荷は大きく変わるため、必ずしも全てのメニューを8~9割で走る必要はありません。
また、1本1本を全力に近いスピードで走り、スピード強化を大きな目的とする場合は、1本1本の合間に5~10分程度の長い休憩を取って取り組む方法もあります。ただし、この場合は一般的なインターバル走というよりも、レペティショントレーニングに近い練習となります。
特に中学生や高校生で陸上初心者の場合は、最初から全力で追い込むのではなく、本数を減らしたりペースを落としたりして、無理のない範囲で取り組むようにしましょう。
陸上短距離走の練習メニューを組む時のポイント
短距離走のタイムを縮めるためには、SDや加速走などのスピード練習だけではなく、テンポ走や補強トレーニング、休養日を上手く組み合わせることも大切です。毎日全力でダッシュを繰り返せば速くなるというわけではありません。
特に中学生や高校生の場合は、成長期であることに加え、学校生活や部活動で疲労がたまることもあるため、練習の強度と休養のバランスを意識しましょう。
また、100m・200m・400mでは重点的に取り組みたい練習も異なります。100mの選手ならSDや加速走などのスタート・トップスピード強化、200mの選手ならそれに加えてウェーブ走などのスピード維持練習、400mの選手ならセット走やインターバル走などのスピード持久力強化も重要となります。
自主練では無理に高強度の練習を増やすのではなく、スプリントドリルや軽めのテンポ走、体幹トレーニングなどで走るための基礎を作るのもオススメです。
自分に合った練習メニューを取り入れて、自己ベストを目指して頑張ろう

短距離走の練習メニューはいろいろとありますが、基本的にはSD(スタートダッシュ)と加速走が効果的。もちろん、それらばかりの単調な練習をしているとタイムを大幅に伸ばすことは出来ないので、テンポ走や坂ダッシュ、ウェーブ走、セット走といった様々な練習を取り入れて体へ良い刺激を与えてあげましょう。そうすることで、良いタイムを出せる可能性が高まります。何か明確な課題(スタートが苦手、後半が弱い等)がある選手は、そこに効果的な練習を重点的に取り組むというのも良いでしょう。是非、自分に合った練習メニューを取り入れて自己ベスト更新を狙っていきましょう。
