フルマラソンやウルトラマラソンの練習に効果的と話題の「峠走」。峠走は、ふもとから峠へ向けて登って、峠からふもとへと下るという練習。このトレーニングは、心肺機能や脚力を強化するのに効果的で、フルマラソンを走るランナーの終盤の対策やウルトラマラソンを走り切るスタミナを養うのに最適。
この記事では、初めて峠走をやってみるというランナーのために、峠走で得られる効果や峠走におすすめの場所(関東・関西)を紹介させていただきます。また、峠走をする時のちょっとした注意点も紹介しているので、是非参考にしてみてください。
目次
峠走とは
峠走とは、ふもとから峠を往復して走るトレーニングのことです。行きは、峠まで続く上り坂をひたすら上り続け、帰りは、峠からふもとまで続く下り坂をひたらすら下り続けます。上り坂では心肺を追い込むことが出来、下りではマラソン後半にバテない脚づくりが出来ると、マラソンランナーに人気の練習。特に長時間走り続ける100kmウルトラマラソンに挑戦するランナーの定番練習として知られています。
この峠走を世のランナーに広く広めたのが、ウルトラマラソンの最高峰であるスパルタロン完走7回、BADWATERウルトラマラソン完走5回、24時間世界選手権出場4回の実績を持ち、「限界突破マラソン練習帳」や「完全攻略ウルトラマラソン練習帳」など数多くのランニング・マラソン書籍を執筆している岩本能史氏(club MY☆STARランニングチーム代表)です。
峠走で得られる4つの効果
上りの効果
峠走の前半「ふもと→峠」の上り坂走では、「心肺機能向上」と「推進力に関わる筋力の強化」の効果が期待出来ます。
心肺機能向上
上り坂は平地に比べて、心拍数が上がりやすい。平坦な道を走っている時と同じペース、或いはそれよりも遅いペースで走っても、心拍数がどんどん上がっていきます。峠まで長く続く上り坂では、高心拍を長く維持出来るので、心肺機能を鍛えるにはかなり効果的です。普段のフラットな道を走る時では、ハイペースを長く維持し続けない限り、高心拍を長く維持するというのはかなり難しい。一方、坂道ならそれほど速いペースではなくとも、ゆっくりとしたペースでも心拍数を高い状態でキープ出来るので、心肺を追い込むのには最適。
推進力を生む筋力の強化
走る時の推進力を生む主な筋肉は、体の後ろ側にあるお尻の筋肉(大殿筋)と太もも裏の筋肉(ハムストリングス)です。これらは体のエンジンとも言われるもので、前へと加速していくための重要な筋肉。上り坂では、平地以上のパワーで身体を前へと推し進める必要があるので、大殿筋やハムストリングスといった筋肉を鍛えるのに効果的。また、大殿筋は骨盤の安定にも関わる筋肉なので、鍛えることでぶれない走りを身に着けることにもつながります。
下りの効果
峠走の後半「峠→ふもと」の下り坂走では、「スピード強化」と「着地筋の強化」の効果が期待出来ます。
スピード強化
下りは平地に比べてスピードが出ます。自分が持っている以上のスピードを出せるので、スピードの底上げに効果的。陸上競技の短距離走の練習では、自分が持っている以上のスピードを体感することで、最大スピードいを高める「オーバースピードトレーニング」というものがあります。峠走の下り坂も同じように、スピードの強化に効果的。下りでは普段のペース走より15~30秒ほど速いスピードで下りを駆け降りていきましょう。
着地筋の強化
ランニング時の着地の際に衝撃を吸収する役割を果たすのが太もも前の筋肉(大腿四頭筋)です。この着地筋(大腿四頭筋)が弱いと、マラソン後半で足が度重なる着地衝撃に耐えられなくなり、動かなくなってしまいます。これがいわゆる「30kmの壁」や「35kmの壁」と言われるもの。下り坂を走り着地筋を鍛えておくことで、マラソンレース終盤で足がバテてしまうのを防ぐことが出来ます。そのため、いつも終盤に疲労が足にきて、30km過ぎあたりから失速してしまいサブ3やサブ3.5が達成出来ずにいる、というランナーの後半のバテ予防対策として効果的です。
苦しいだけじゃない!峠走は峠からの景色が最高
峠走はかなり苦しい練習です。10km以上の上り坂を呼吸が大きく乱れる中、ひたすら上り続け、帰りは腿前の筋肉が悲鳴を上げる中、ひたすら下り続けるという、かなりきつい練習。練習を終えた翌日はほぼ確実にお尻から下は筋肉痛です。そんな過酷な練習である、峠走もただつらいだけという訳ではありません。
峠走は、前半の上りを終えた後には大きなご褒美が待っています。それが、峠から見える素晴らしい景色です。一生懸命頑張って上り終えた後に見る、頂上からの景色は最高です。上りを終えた後は、景色を眺めながら少しばかり心身ともにリフレッシュしましょう。
峠走におすすめのコース
足柄峠(関東)
東京近辺で、峠走をするなら「足柄峠」がおすすめ。足柄峠は峠走のメッカと言われるほど、ランナーの間では定番中の定番のコース。神奈川県のJR御殿場線「山北駅」からすぐの入浴施設「さくらの湯(山北町健康福祉センター)」をランステ代わりとしてスタートし、足柄城址までの道を往復するコース。片道約13kmで往復約26km。
六甲山(関西)
大阪近辺で、峠走をするなら「六甲山」がおすすめ。六甲山の山頂を目指すコースは、阪急神戸線「夙川駅」からスタート。大阪駅からアクセスしやすく、関西での峠走に最適。六甲山の山頂では神戸の素晴らしい街並みを満喫できます。さらに、食事やショッピングに便利な六甲ガーデンテラスもあるので、山頂で楽しい時間を過ごしながら休憩することが出来ます。距離は片道約12キロで往復24キロ。
峠走をする時の注意点
車に注意する
峠走で利用するような道は、基本的に歩道がありません。車が真横を通過していくような道を走るので、車には十分に注意しておく必要があります。特に、早朝や夜間といった暗い時間帯は避けるのがベスト。また、走る時は出来るだけ遠くからも目指すような明るい色のウェアを着ておくのがおすすめです。
怪我に注意する
峠走はかなり効果が高い練習です。でも、その分だけ身体への負担も大きい。特に下り坂では着地時の衝撃が強く、足の裏や足首、膝、腰といった箇所を痛めるリスクが高いので、自分の体と相談しながら無理のない距離やペースを設定することが大切。峠走を終えた後は普段より入念に体のケアを行いましょう。
峠走でマラソンの後半バテない脚を作ろう
峠走は心肺機能強化、脚力強化と効果の高い練習。特にマラソン終盤でバテない脚を作るのに効果的。フルマラソンで終盤の失速が原因でサブ3やサブ3.5を中々達成出来ずにいるランナー、初めてのウルトラマラソンに向けてスタミナに不安があるというランナーは、トレーニングの一つとして峠走を取り入れてみると良いでしょう。