長時間走るマラソン、長距離を走る自転車(ロードバイク)で注意しておきたいのが「ハンガーノック」。ハンガーノックは、長時間負荷の高い運動を続けることで、エネルギー切れを起こすもの。体内の糖質を多く消費する持久系スポーツをしていると良く耳にする言葉ですが、ハンガーノックは非常に危険なものです。
この記事では、マラソンランナーを始め持久系スポーツに取り組む人のために、ハンガーノックとは何か、その症状、なってしまった時の対処法、未然に防ぐための予防方法についてまとめて紹介しています。本格的に走るシリアスランナーだけではなく、初心者ランナーもハンガーノックというものを知っておく上で是非参考にしてみてください。
目次
ハンガーノックとは
ハンガーノックは、マラソンや自転車、登山といった長時間・長距離に及ぶ運動によって、エネルギー不足(糖質不足)を起こし、極端に血糖値が下がった状態のことです。医学的には、この状態のことを「低血糖」と言いますが、マラソンやロードバイクといったスポーツでは「ハンガーノック」と呼ぶのが定番です。また、登山では飯が足りていないということで「シャリバテ」「シャリ切れ」と呼ぶこともあります。
ハンガーノックは車に例えると、ガソリンがなくなった「ガス欠状態」です。当然、そのような状態では力を発揮することは出来ません。自分の意思とは関係なく、体が思うように動かなくなったり、意識がもうろうとしたりします。症状が初期に現れる軽度のものであれば、すぐに糖質を補給することで回復しますが、重度の低血糖になると回復まで時間がかかります。さらに、最悪の場合には死に至る可能性もあるので、ハンガーノックを甘く見ていてはいけません。
ハンガーノックの症状
ランナーや自転車乗りがハンガーノックになると、「足に力が入らなくなる」「頭痛」「吐き気」「めまいがする」「思考が鈍くなる」「手足が痺れる」「極度の空腹感」といったいづれかの症状または複数の症状が現れることが多いです。もし、長距離走やロングライドをしていて、ハンガーノックらしき症状が現れたと感じたら、すぐに糖質を補給することが大切です。ハンガーノックの初期症状の段階では、素早く糖質を補給することですぐに症状が回復する場合が多いです。
また、ハンガーノックは医学的には「低血糖」のこと。低血糖の症状は、一般的に血糖値が70mg/dl以下の時に出現し、「発汗」「動悸」「手指の震え」「熱感」「不安感」「悪寒」といった症状が現れます。これらの症状は、低血糖であることを知らせる警告のようなもの。マラソンやロードバイクをしている人は出来るだけ、この初期段階のサインを見逃さないように。さらに低血糖が進むと、「集中困難」「脱力感」「眠気」「めまい」「疲労感」「ものがぼやける」といった症状へ。さらに低血糖が進むことで「嗜眠」、そして「痙攣」「昏睡」へと重篤の症状につながることがあります。
参照元:低血糖の症状は?|糖尿病サイト
ハンガーノックになりやすい原因
原因①空腹のまま走り出す
空腹のまま走り出すとハンガーノックに陥る可能性が高くなります。走り出す段階で既に血糖値が低い状態なので、血糖値が極端に下がってしまい、ハンガーノックを引き起こします。朝ランや夜ランをする時、ごはんの前に走る人が多いですが、まったく何も食べないで走るのはNGです。走る前に糖質を補給することが大切。
原因②途中で糖質を補給しない
長距離・長時間走る時に途中で糖質を補給しないとハンガーノックにつながる可能性が高くなります。特にハーフマラソンやフルマラソンといった長距離レースでは、レース中のエネルギー補給は必須です。もちろん日々の練習でもハーフやフルに匹敵する距離を走る時に、走っている途中で何も飲まず食べずにいると極端に血糖値が下がってしまうので危険です。
原因③オーバーペース
普段以上のペースで頑張って走ると、その分だけたくさんのカロリーを消費することになります。普段と同じ距離でも走るペースが速くなればなるほどたくさんのエネルギーが必要になってくるので、いつも以上のペースで走る時はハンガーノックに要注意。また、本番の大会や仲間とのペース走で自分が持っている力以上のペースで頑張ってしまうと、速い段階で体内の糖質を使い切ってしまうので、自分の力に見合ったペースで走ることも大切。
ハンガーノックになってしまった時の対処方法
対処①すぐに糖質を補給する
もし、ハンガーノックになってしまったら、すぐに糖質を補給することが大切です。補給食を携帯しているならその補給食を、もし持っていないなら近くの自動販売機やコンビニに立ち寄って糖質の多い食べ物や飲み物を買ってすぐに口にしましょう。この時のオススメは、コーラやサイダー、カルピスといった清涼飲料水です。清涼飲料水は糖分が多く、同時に水分補給も出来るので、ハンガーノックになってしまった時の対処に最適。
対処②しばらく安静にする
ハンガーノックになってしまったら、糖質を補給しつつ、しばらくは動かず安静にしておくことが大切。ハンガーノックになると、糖質を補給してもすぐに活発に動き出せるわけではないので、最低でも30分ぐらいは安静にしておく必要があります。
対処③回復しない場合は病院へ
もし、糖質を補給して休んでみても症状が回復に向かわない場合はすぐに病院へ行きましょう。ハンガーノックはスポーツシーンでよくみられるものですが、重度になると死に至る危険なものです。糖質を補給しても症状が回復へ向かわない、又は症状が重い場合は自己判断で対処せず、すぐに医療機関で医師に診てもらうのが良いでしょう。
ハンガーノックにならないための予防方法
予防①ごはんはしっかり食べておく
ハンガーノックにならないためには、朝、昼、夜の食事をしっかり摂っておくことが大切です。朝は忙しいからと朝食を抜いたり、ダイエットのために1食を抜いたり、糖質制限のために炭水化物を極端に少なくした食事をしていると、いざ走る時にハンガーノックになるリスクが高くなります。そうならないためにも、毎日3食しっかりと摂っておくことが大切。
予防②走る前も糖質補給を忘れない
ランニングを始め運動をする時は、基本的に食事の前にすることが多いです。朝ランなら起きて朝食を摂る前に、夜ランなら仕事終わりに晩御飯を食べる前にする人がほとんどでしょう。もちろん、食事を摂る前に走るのはダイエットに良いし、消化器官への負担を減らすのにも良いです。ただし、まったく何も食べずに空腹で走るのはNG。朝なら10時間、夜なら7時間程度絶食状態にあるので、体内は糖質不足の状態。
走る前は、バナナやエナジージェル、ようかん、カステラ、飴、チョコレートといった食べやすいものを食べて、最低限の糖質は補給しておくようにしましょう。
予防③補給食を携帯しておく
ハンガーノックになるのを防ぐためには、運動中の糖質補給も必須です。長距離を走る場合や自転車でロングライドへ出掛ける場合は、エナジージェルやスポーツようかん、飴、チョコ、バナナといった補給食を携帯しておきましょう。
予防④30分置きを目安に糖質補給をする
運動中の糖質補給は30分おきが目安です。スポーツドリンクで水分補給と同時に糖質を補給しましょう。もちろん、スポーツドリンクを飲むだけでは糖質補給としては足りないので、補給食で別途糖質を補給することも忘れないように。補給食は出来るだけ量が少なく高カロリーなものがオススメ。
予防⑤レース前はカーボローディングを心掛ける
フルマラソンやロードレースへ参加する場合は、レース3日前ぐらいから糖質を多く摂取するカーボローディングを意識すると良いでしょう。レースでは練習以上のハイペースで走ることが多いので、普段よりもたくさんのエネルギーが必要です。そのため、レース前の段階から筋肉や肝臓にグリコーゲンという形で糖質を貯金しておくために、炭水化物多めの食事を心がけましょう。
ハンガーノック対策は「ならないこと」が大切!日々のワークアウトから糖質補給を意識しよう
一度ハンガーノックになってしまうと、回復するまで時間がかかります。ハンガーノックへの対策としては、ハンガーノックになってからの対処を素早くする術を身に着けるのではなく、あらかじめハンガーノックにならないような予防法を身に着けることが大切。マラソン大会や自転車のロードレース大会といったレース本番はもちろん、日々のトレーニングでもハンガーノックに注意して、走る前と走っている時の糖質補給を意識的に行うようにしましょう。当然、長時間走る時には補給用の携帯食は必須。さらに、万が一補給食が足りなくなった時に備え、小銭も携帯しておくようにしましょう。